タイトル | ことばの歳時記 |
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著者 | 金田一春彦 |
新聞に掲載されていた「ことば歳時記」という著者のコラムを、一冊の本にまとめたもの。 日本のことばに関する幅広いトリビアを、日めくりカレンダー感覚で読むことができる。 |
この本を読んで私がまず感じたことは、「日本のことばなのに、こんなにも私の知らない世界があるんだ」ということだった。
日本語に関する自分の無知さを知ると共に、繊細で鮮やかな形容のことば、語源不詳の不思議なことば、遠い昔のことばの名残を持った歴史あることば……。日本のことばには、私のまだ知らない素敵な世界があることを強く感じた一冊である。
日本のことばでは、日本の気候、殊に雨に関することばが細かく分かれているように感じる。辞典でもネットでもよいが、雨の類語を調べてみると、その数は恐ろしいほど存在していることが確認できると思う。
では実際に、その雨のことばたちが書かれた辞典/ウェブサイトを閉じたときに雨が降っていたとするならば、この雨を何と表現するのが素敵だろう? 雨、と一言で言ってしまえばそれで終わることだが、もっと魅力的なことばがきっと沢山あるはずだ。
しかし、よく考えてみると、雨に関することばを普段は案外使い分けないものである。まあまあ使われる有名なものでは、「梅雨」(つゆ)、「秋雨」(あきさめ)、「五月雨」(さみだれ)などが挙げられるが、それでも自分の語彙から十個以上の雨のことばを挙げるのは苦しくなってくる。
だが、さきほど辞典やネット上のウェブサイトを調べてみたところでは、雨に関することばがもっと存在していたことを我々は確認している……。
このようにして見ると、雨を表現する日本のことばがどれだけ細かく分かれているかがよく分かる気がする。
私が紹介したいこの「ことばの歳時記」という本は、さきほどの雨のことばの例のように、まだ見ぬ日本のことばの興味深い世界を読者たちに教えてくれる、魅力ある一冊だ。ことばのジャンルは雨や気候に限らず、様々な分野から出されている。
そして、日めくりカレンダー感覚で読むことができるのもこの一冊の魅力。簡単に言ってしまうならば、日本のことばに関する三百六十五個の様々なトリビアが、この文庫本にぎゅっと凝縮されている。
一頁につき一つのトリビアが書かれているので、同じ話題について延々と読むのは苦手という人にもオススメできるだろう。私自身も飽きやすい性格の持ち主であったが、この本にはキリの良いポイントが沢山あるため、ちょっと読んで、またちょっと読む、ということができる。
何より、日本のことばに魅かれる人や日本のことばをもっと知ってみたいと思う人に、是非とも読んでみて欲しい一冊だ。
