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はんぶんこして、二で割って、かたく結ばれる友情

しーそると

2018年 日本文化学科入学

タイトル きみにしか聞こえない
著者 乙一
『きみにしか聞こえないーCALLING YOUー』『傷ーKIZ/KIDSー』『華歌』の短編・中編小説が計3つ収録されています。「切なさの達人」と言われる乙一さんの作品ですが、小学校高学年が読んでも、理解できる優しい文章です。今回は『傷ーKIZ/KIDSー』に注目したいと思います。他人の傷を自分に移すことができるアサトとオレの、切ない物語です。傷の深さも、痛みも、半分ずつ。二で割って、はんぶんこ…。

Book Yard企画に誘われたので、折角だからと、参加してみることにしてみました。

小学生の時、学校の図書館で出会ったこの本は、大学生に至るまで、私の記憶の中を何度もチラついていました。この本を手元に置きたくなった時、高校入試で、偶然問題に出てきた時、ふと、昔を思い出した時…。そんな思い出が、この本には詰まっています。

久しぶりに読んでみると、昔のように涙は出てきませんでした。私の感覚が昔と変わってしまったのか、原因は分かりません。それでも、この本はいつも私の心の片隅に巣を作ります。 主人公のオレとアサトが信じられるのは、自分自身とお互いだけだったのかもしれないと思いました。大人の声に耳を貸さずに突き進む姿は、反抗期とは全く違うものを感じさせます。 きっと昔の私は、彼らのような友情が欲しかったのかもしれません。

「傷の深さも、痛みも、半分ずつ。二で割って、はんぶんこだね。」

これは、作中のアサトの台詞です。 傷を“はんぶんこ”する彼らは、大人になったら互いのことを忘れてしまうのでしょうか。
皆さんは、小学生の時の友達と今でも連絡をとっていますか?なんでも言える、相談できる友達はいますか?
学生の皆さんは、オンライン授業で家にいる時間が多くなっているかと思います。
この機会に、友情について考えてみるのもいいかもしれません。
そんな時は、オレとアサトの物語を手に取ってみませんか?

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