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祖母の家にも庭に小さな池があり、夏になるとサルスベリが咲いて

はんなり

大学職員

タイトル 家守綺譚
著者 梨木香歩
100年くらい前の明治の頃、おそらく京都のはずれあたりと思われます。綿貫征四郎という駆け出しの物書きさんが、学生時代に亡くなった友人(高堂)の実家に住んで家を守って欲しいと高堂の祖父から依頼されます。その家は、庭に疎水からひかれた池、サルスベリや白木蓮など多くの草木があり、家の裏には田んぼや山がある自然豊かなところでした。四季折々の中で、河童や小鬼、木の精霊、狸など、少し不思議なものたちや亡くなった高堂と出会うお話が、植物名の章立てで綴られています。

 大好きだった祖母の家にも庭に小さな池があり、夏になるとサルスベリが咲いていました。サルスベリのピンクのかわいいフリルのような花が池に落ちていた光景が目に浮かび、花好きの祖母が、「今日は、池のスイレン(ヒツジグサ)が〇つ開いたよ。」と言って一緒に池のスイレンの花を数えた子どもの頃のことをとても懐かしく思い出し、ほっこりした気持ちになりました。

 また、本を読んでいるうちに、「疎水の両岸の桜が満開~。」という箇所や「南禅寺で叡山から東山を南下~」等、京都を感じられる部分がそこかしこに出てくるので、京都好きな私にとっては知った地名が出てくるたびに、そのシーンを思い浮かべてみたりしていましたが、読み終わると、そろそろ京都も紅葉の季節よね。南禅寺からだと、永観堂、哲学の道を通って…、お茶するなら、よーじやさんかな? やっぱり、ポムでアップル&シナモンケーキがいいかしら…、とお散歩コースを考えては、空想でGOTOトラベルしてしまいました。

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