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謎を追いながら、「よく知らない人」を知る

キムもん

2010年 欧米文化学科卒業

タイトル トーキング・トゥ・ストレンジャーズ
著者 マルコム・グラッドウェル
『第1感』『天才!』などの世界的ベストセラーを送り出してきたグラッドウェルが、多様な実例と鋭い洞察力によって、人間の性質の暗い側面に関する定説の誤りを暴き、「他者といかにつきあうか」という人間の根源的な営みに新しい光を当てる。他者と出会う機会がかつてなく多い時代における必読の書!(Amazon内容紹介より)

2020年の抱負は「家族みんな、心穏やかに過ごせますように」だった。
そう祈った3ヶ月後、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言のため、私たちは不要不急の外出を自粛せざるを得なくなった。

SNSを開けば、自粛警察と自粛警察に対しての警察官が互いの正義をぶつけ合っているのを見かけ、どんどん心が疲弊していった。

そんなとき、書店で本書を見つけた(2020年6月発行)。
本書『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』は、「よく知らない人」について私たちが知っておくべき3つのことを多数のエピソードを通して教えてくれる。

400ページを超える大作であるが、著者の巧みな構成のおかげで、ミステリー小説を読んでいるような気持ちでページをめくることができる。

私は読後、いかに自分は他者を1人の人間として見ておらず、自分勝手な解釈で他者を「理解した」気になっていたのかを思い知らされた。

他者についてきちんと理解するのは不可能に近い。
しかしだからといって、その他者を「違う種類の人間」だと切り捨ててしまうのは違う。
目の前の他者について「よくわからない」と感じたら、本書の3つのポイントを思い出し、相手の背景を見る努力はするべきだと思う。

リアルな対面でないなら、なおさらだ。
たとえあなたが「コロナが収束するまでは、大勢の人が集まるリスクのあるところへ行くのは我慢するべきだ」と考えているとしても、そこへ足を運んだ人の行動だけをとって批判するべきではない。

自分の思う正義で、必ずしも相手の人間性をはかれるわけではない。

そう考えると、4月から徐々に憂うつや怒りに囚われていた心が、するすると癒されていった。
おかげで残りの1ヶ月半を、心穏やかに過ごすことができそうだ。

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