2020.07.01ボランティア活動を通して、学び、育まれた未来の自分 ー Magazine No.00-2018 Spring 〜 Seig卒業生が語る、聖学院での学びと実り 〜

ボランティア活動を通して、学び、育まれた未来の自分 ー  Magazine No.00-2018 Spring 〜 Seig卒業生が語る、聖学院での学びと実り 〜

大学時代はボランティアに熱中したと話す、福田知央さん(2016年3月人間福祉学科卒業※)。福田さんはなぜボランティアに出会い、その魅力にひかれていったのか。そして、活動を通じてどんなことを学び、その日々はどんな未来へとつながっていったのでしょうか。

福田知央さんと丸山阿子さん(本学ボランティア活動支援センター〈以下、ボラセン〉)との対談を掲載します。

※人間福祉学科は2018年4月より心理福祉学科へ統合。

【登場人物プロフィール】

  • 丸山阿子さん
    ボランティアコーディネーター(社会福祉士/保育士資格)。大学卒業後、「地域で活動する人を応援したい」という想いから、都内区役所や他大学にてボランティアコーディネーターとして勤務。2012年より聖学院大学ボランティア活動支援センターへ。一人ひとりが持っている「やる気スイッチ」を探しながら、学生の相談対応にあたっている。
  • 福田知央さん
    2016年3月人間福祉学科卒業。大学時代は、学生サポートメンバーでのボランティア活動に熱中。学生ボランティアコーディネーターとしての役割を担いながら、社会福祉の勉強も両立。地域の方々とのふれあいが楽しく、大学最寄り駅前での地域貢献のボランティアにも参加。卒業後は一般企業に就臓ののち、2018年4月より上尾市役所にて勤務。

 

始まりは、突然の声かけから。
ボランティアを通じて、人脈も活動の幅もどんどん広がっていった。

福田 大学時代は、ボランティア活動に熱中していました。地域のイベントに参加したり、障がいを持った方の施設でお手伝いしたり、子ども向けイベントの運営をしたり…。そこで関わる人や活動の楽しさに気づき、ボランティアの魅力にひかれていきましたね。
きっかけは、ボランティアセンターの丸山さんとの出会いでした。大学2年のある日、いつも友人と集まっていた学生ホールで「ボランティア活動してみない?」と声をかけられたんです。

丸山 聖学院大学には、もともとボランティア活動に興味のある学生もたくさんいます。もちろんそういう子も大事ですが、福田君のようにボランティア未経験で、おしゃれが好きで、そして地域にまだ関わってないような子にこそ、社会に接する楽しさを知ってほしいと思っていました。
実は、福田君が福祉の授業をとっていることも知っていたので、ボランティア活動の募集が多くなる夏休み前に声をかけました。

福田 ボランティア活動はそれまでしたことがなくて「ボランティア活動=いいこと」というイメージしか頭の中にはなかったですね。
最初は子どもたちと遊ぶ活動から始めて、その後、地域のイベントで福祉体験ブースを作り、運営のサポートをしました。ボランティアを通じて、人脈も活動の幅も格段に広がっていきました。僕にとって、丸山さんとの出会いは大きな転機でした。

ボランティアのことだけでなく、勉強も、恋愛も•••。
さまざまなアドバイスをいただきました(笑)

丸山 当時福田君は、毎週ボラセンに来てくれていたよね。

福田 はい。ボランティア活動していると壁にぶつかることが多くて、毎週足を運んで相談したり、後は丸山さんには、ボランティアのことだけでなく、勉強や恋愛のことも相談していましたね。

丸山 ボランティア活動を作っていく過程で、一緒に過ごす時間が長かったり、本音で語り合う機会が多いからか、学生同士が恋愛関係に発展することもしばしばあって。そういった悩みも含めて、いつでもふらっと顔を出せる環境づくりは意識していますね。

福田 丸山さんはボランティアをしている学生全員から、頼りにされる存在でした。何かあったらすぐに相談に乗ってくれる。だけど、丸山さんは決して答えをくれるわけじゃなくて。言ってみれば、解決までの道を照らしてくれる、そういうアドバイスが多かったように思っています。

丸山 福田君はとても真面目で、やり始めたら突き詰めないと気が済まない性格なんです。だから、自己コントロールの大切さにも気づいて欲しいなと思っていました。
学生には、充実した4年間を過ごして欲しいという思いがあって、プライペートのことでも授業のことでも大学生活に関わるすべてのことをサポートしたいといつも思っています。だから、ボランティアセンターに相談にくる学生に対して、ボランティア情報を提供するだけでなく、その子が悩んでいることがあったらまずはそっと寄り添い、声をかけますし、私に答えられないような相談であれば知人を紹介することもあります。聖学院大学は少人数制で、一人ひとりの顔が見えるのがいいところですから。コーディネーターとしても一人の学生の4年間をサポートするという意識で向き合っています。

 

開催危機のホタル祭りが、一転、大盛況に。
そのきっかけも、ボランティアのつながりから。

福田 以前、丸山さんから「ボランティア活動は、出会いとつながりの場だよ」と言われたことがありました。それを感じたエピソードが、大学で開催していた「ホタル祭り」です。聖学院大学では、毎年夏に開催しているのですが、実際にホタル祭りで鑑賞してもらうのは、大学のビオトープで羽化しているホタルで、学生がその管理などをしています。ただ、その年は羽化に苦戦(*)して…。
(*ホタル祭り当日に羽化のタイミングが合わないことがあります)
当日は購入したホタルも加えてイベントをやろうかという意見が出たんです。僕は「ホタルを買ってまでやる意味があるのか?」と思っていたのですが、運営メンバーの中には「購入してやった方がいい!」という人もいて意見が分かれていました。

丸山 毎年おなじみのホタル祭りですが、この企画を立ち上げたメンバーはすでに卒業していて、当時の「想い」がうまく継承されていなかったんです。そんな時に、福田君が悩んでいる姿を見て、とある知り合いを紹介しました。その方は、ある地域でホタル祭りを開催していて、どんな想いでホタル祭りを開催しているのか、また地域とどう関わっているのかを聞いて、何かヒントになることがあればと思い、引き合わせました。

福田 その方には「なぜ君たちはホタル祭りを開催するのか?」という本質的なことを問われました。そこで改めて深く自分を見つめ直してみたところ「このお祭りを通して地域の人たちに楽しんでもらいたい」という想いに至ったんです。そこで思ったことや気づきを、チームみんなに共有して話し合い、ホタル祭り当日は、自分たちの手で育てたホタルだけを放って開催しました。

丸山 地域の皆さんからも反響があって、結果的には大盛況だったんだよね。ホタルは数匹しかいないから、みんなで目を凝らして「あ!ホタル光った!」とか言ったりしていたけど、住民の方と学生たちが交流している姿や、みんなで頑張ってホタルを見つけようとしている姿は、すごく微笑ましかったんですよ。

福田 そうなんですよね。当日は茶道部がお茶を提供してくれたり、実行委員が全身黒タイツでホタルにふんして、お客さんを盛り上げてくれたり…。ホタルが数匹しかいなかったからこそ、みんなの工夫でイベントも盛り上がりました。丸山さんは人をつなぐことで、その人の視点や意見を通して僕自身に気づきを与えてくれました。人をつないでくれるのは本当に嬌しいですし、自分で頭を使って答えを導き出すことになるので成長にもつながったと思います。

丸山 私としては、学生たちにいろんな人を紹介できたことが良かったなと思っています。市役所からもイベント企画のオファーをいただくことがあって、学生と引き合わせていろんなイベントを企画、運営することがあるのですが、市役所の方も学生がイペント運営に参加するといつも以上に活気づくんですよね。街の人にもいい影響を与えられる。そう考えると、いい出会いを生み出すことが私の役割なのだと思います。

福田 卒業してからも、ボランティアのつながりに気づかされることが多いですね。僕、卒業してからも何か地域貢献がしたくて、地域とのつながりができそうな協同組合の会社に就職したんです。ですが、怪我をして退職せざるをえない状況になってしまって…。そんな時に支えてくれたのが、ボランティアで出会った仲間たちでした。さらに、次の就職先として決まった上尾市役所では、学生時代に関わりのあった市役所の方々とご縁があってまた一緒に働けることになったりと、ボランティアを通じて得たつながりは、僕を支えてくれるんだと気づきましたね。

 

悩んで、迷って、ぶつかって…
そのすべての経験が、今の自分につながっている。

福田 僕は大学1年生の時から、友人同士のグループの中でもリーダー的な役回りをすることが多かったんです。ボランティア活動はそのグループのみんなと一緒に始めたんですが、次第にそれぞれがさまざまなボランティア活動をするようになって。気がついたら、一人ひとりが自分の耀く場所を持ち始めるようになったんです。そんな中で僕は、自分だけが輝いていないんじゃないかと感じてしまうようになってきて。そのことに悩んだ時期もありましたね。

丸山 福田君は、きっとそれまで人の活躍をうらやましく思ったり、嫉妬心を抱いたりという経験はしてこなかったんです。だから、人に対して嫉妬することがいけないことのように思っていて、悩んでいたんだと思います。
私は、福田君やそのグループの一人ひとりが、この4年間のうちにさまざまな団体等で活躍してほしいと思っていました。いろんな活動を経て、それぞれで力をつけて再結集したら、もっと絆が深まって、楽しいグループになるはずと思って声をかけ続けましたね。

福田 丸山さんに何度相談しても、数ヶ月は自分の中にある嫉妬心がなかなか受け入れられなくて…。完璧主義で「自分の意見が一番だ!」って思っているけど、そういう弱い自分は周りには知られたくないと思っていました。でも、丸山さんから「それ、みんな知ってるよ」とあっさり言われていろいろ吹っ切れましたね。次第に、他のメンバーが代表として頑張っている企画を手伝ったり、応援できるようになりました。

丸山 羨ましさや嫉妬をする弱い自分も、まずは受け入れてみる。そうして自分を知ることで、初めて自分自身そして周りの人も受け入れることができるようになるものだからね。

福田 その考え方は、今の生活にも活きていますね。例えば、ボランティア活動をする上で大切な「相手を否定しない」という姿勢が、人の話を聞く力につながっていたり。人前で話したりする機会もたくさん与えていただいたことで自信もつきましたし、イベントでの企画力なども養われました。ボランティア活動の場で培った力が、いろんな場面で役に立つことが多いですね。

丸山 福田君、いろいろな意味で柔らかくなったよね。出会った当初と比べると、だんだんと自分が感じたことや経験を、友人や後輩に広めることができるようになって。そんな役割を担える人になってくれたことに、しみじみと成長を感じます。多様性を知り、社会に出ていろんな人の価値観を知る。そういうきっかけをボランティア活動の中で提供できたのなら、私も嬉しいですね。

福田 僕は大学4年間を通して、勉強だけでは得られないものを、このボランティア活動を通して得ることができました。もちろん、楽しいことばかりじゃなかったですけどね。人とぶつかったり、思い悩んだりしながら、でも、そういった経験が今につながっているんだと思います。だから、僕はこの大学を卒業したって胸を張って言いたいし、聖学院大学に入って本当によかったなって心から思っているんです。僕にとって聖学院大学は、「誇り」だと思っています。

 

初めて多くの友人を巻き込み、その楽しさを感じたボランティア活動の原点。大学の地元・宮原駅で行われたKl-TA祭りでの一枚。

back to Home