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ワトソン君は絶対「君」付けしたい

ミシン

2005年欧米文化学科入学

タイトル シャーロック・ホームズの冒険
著者 アーサー・コナン・ドイル
19世紀末イギリス ロンドン。ベイカー街221Bにある下宿に住む彼の元には、依頼人が引きも切らない。下宿に住まうは、稀代の名探偵シャーロック・ホームズ。難解、奇天烈、奇々怪々、日々持ち込まれるあらゆる事件に、ホームズが挑む。

シャーロック・ホームズは、世界で一番映像化されたキャラクターらしい。

登場人物には、助手のワトソン君(ワトソン君は絶対「君」付けしたい)、世話を焼いてくれる下宿のおば様ハドソン夫人、へっぽこ刑事の見本みたいなレストレード刑事(結構頑張ってる)などなど。
キャラクター小説として読んでも、かなり優秀。(むしろそれ目当て)

私もホームズをテーマにしたマンガ、アニメ、映画、ドラマをかなり見ました。なかには落語を使って推理したり、ホームズを女性に置き換えたり、宿敵モリアーティー教授を主人公に据えたアニメさえある(ピカレスク感が最高)くらいで、手を変え、品を変え、それでも色褪せないホームズの格好よさ。

そう、彼はとても格好いい。
ただ、19世紀のイギリスは保守的な世界で、階級格差も厳しい。それらを取っ払って自分の推理に邁進する彼は作中では変人です。
変人だけど、その実、全てを冷静に見据えている。(そこがいい)

読む前は、彼は何でも知っててすぐに解決できてしまう超人的な人間だと思っていたのですが…。
図書館で資料を漁ったり、その場の状況をきっちり観察し、聞き込みをし、時には自前で科学捜査までやったりする。
情報の全てを知ってるわけではなく、答えにたどり着くための手段と情報の引き出しの「取っ手」を沢山持っている人なんです。

今だって、折角ネットで検索しても、的確な検索ワードが分かってないと知りたいことが全然出て来ないなんてザラですよね。
情報を的確に検索し、読み取り、自分で問いを立て、物事の本質や真実を掴む。とても現代的な人だと思います。

今、コロナ禍によって私たちの世界の弱いところがむき出しになっています。
格差、経済、政治力、この世界の本質を見極める時が来ているよなあ、と思ったりします。
雨上がりの泥の地面に這いつくばって、足跡をよく観察すれば、本質が見えてくるかも。少なくとも、ホームズなら解き明かすためにそうすると思います。

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